行政書士の大湾です。
この記事では
- 遺言を書きたいけど、何から始めていいかわからない
- 公正証書遺言と自筆証書遺言で悩んでいる
- 公正証書遺言と自筆証書遺言、それぞれのメリットとデメリットを知りたい
という方のために、先日、自分の自筆証書遺言を書いた私が
- それぞれのメリット・デメリット
- どんな人にはどの遺言がおすすめか
という部分を出来る限りわかりやすくまとめようと思います
先に結論としては
- 60代以上である程度財産がある⇒公正証書遺言
- 40代~50代の人で遺言を書いたことがなく、これからも何度か書き直す可能性がある⇒自筆証書遺言
ただし、形式・法律的にミスが少ないのは公正証書遺言です
初めに:自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらはダメでどちらは完璧ということはない
「自筆証書遺言は無効になりやすい」
「公正証書遺言は公証人が作ってるから絶対に揉めない」
ということはありません。
公正証書遺言でも、遺言の内容に不満がある相続人が、
「この遺言は本人の意思じゃないはずだ。兄貴に強制されて作ったんだ!」
「公正証書を作成したとき、お父さんはすでに認知症だったので無効だ!」
などと言って、裁判になっているケースはいくらでもあります。
つまり、例え公証人が作成した遺言であっても、
遺産の割合に不満がある相続人がいれば、裁判を起こす人はいるので、
「公正証書だから絶対大丈夫」ということはありません。
一方、自筆証書遺言でも、法務局が保管してくれる制度を利用したり
保管手続きの際に、形式的な不備がないか、法務局の職員がチェックしてくれますので
自筆証書遺言だから無効になりやすいということもないのです。
費用や時間などの面を総合的に判断して、ご自身に合った遺言を作成すればOKなのです。
自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリットを比較
自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言(法務局へ保管する場合を除く)のメリットを簡単にまとめてみます
- 無料で書ける
- 用紙のデザイン・カスタマイズが自由
- 何度書き直してもお金がかからない
- 遺言内容を秘密にできるので何でも書ける
とにかく紙とペンさえあれば、無料で始められるというのが非常に大きな強みです!
逆にデメリットは
- 法律に則った形式で書かないと無効になるおそれがある
- 自宅に保管していると、改ざんや紛失のおそれがある
- 法律の要件が不備で、内容通りに分配できないおそれがある
- 家庭裁判所の検認手続きが必要
- 遺言を秘密にしていた場合、発見されない可能性がある
法律に則った形式とは
- 財産目録以外は全部自筆で
- 作成日は日付まで明記する。「○年○月吉日」ではだめ
- 遺言者の署名の横に押印も必要
- 訂正方法は、訂正箇所に二重線を引き、署名と同じ印鑑で訂正印を押す
- 修正液はNG
- 訂正内容を(何行目に何字削除、何文字追加など)を余白に書く
- 2名以上で連名の遺言は無効
- 内容が不明確な場合、無効になる可能性もある
- 法務局の自筆証書遺言保管制度を利用する場合、用紙は上余白5mm、右余白5mm、左余白20mm、下余白10mm開けなければいけない
公正証書遺言のメリット・デメリット
続いて公正証書遺言のメリットです
- 公証人が作成してくれるのでラク
- 法律の知識がなくても公証人が作成するから安心
- プロが作るから形式的に無効になる可能性が低い
- 公証役場で原本が保管されるので紛失や改ざんの心配がない
- 遺言の存在が周知できる
- 内容が明確になる
- 家庭裁判所の検認が不要
このように、公正証書遺言はたくさのメリットがありますが
- 元裁判官や元検察官などの法曹資格者が遺言を作成してくれること
- 内容の改ざんや紛失のおそれがない
という二点が最大のメリットです
逆にデメリットは
- 手数料を払わないと作成してもらえない
- 戸籍謄本などの必要書類を自分で取得するのが面倒
- 公証役場とのやりとりが面倒
こんな感じです
戸籍謄本や固定資産評価証明書など、遺言する本人のものから、財産をもらう人の戸籍謄本まで自分たちで取得しなければなりません
本籍地が現在住所のある市町村区役所であれば良いのですが、県外だと郵送で請求しなければなりません
また、相続人がたくさんいれば、相続人の数だけ戸籍謄本が必要です。そのため、必要書類を揃えるまでに1か月以上かかることもあるんです
さらには、原案の作成から修正まで、完成までに公証役場と何度もやり取りが必要
これらが面倒くさいという方のために、公証役場とやり取りし、必要書類も集めてくれるのが、行政書士の作成のサポートです
行政書士に依頼すれば、遺言者本人は、遺言をチェックして、あとは公証役場でサインするでOKです
多少お金に余裕がある人は、行政書士に公正証書遺言の作成のサポートを頼んだほうが、時間と労力の節約になるのではないかと思います
でも、自分で戸籍を取り寄せる事務作業や、役所に行くのが大好きな人なら大丈夫
行政書士などに頼まなくても、お一人で公証役場とやりとりできると思います
公正証書遺言のメリット・デメリットに関して、もっと詳しく知りたい場合はこちらの記事を参考にしてください
自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリットを表にして比較してみた
今までのメリット・デメリットから、1つの表にしてみました
こうしてみると、それぞれに特徴があり、一長一短という事がわかります
自筆証書遺言の方が自由度が高い代わりに、自分で調べたり、やらないといけない事が多いというイメージです
もしもあなたが、遺言のことが全くわからず、法律の知識も全くなく、何を書いていいかわからない!というのであれば、公正証書遺言をおすすめします
逆に、ある程度自分で調べる力があり、まったくお金をかけたくないというのであれば、自筆証書遺言をおすすめします
公正証書遺言がおすすめなのはこんな人
公正証書遺言がおすすめなのはこんな人です
- 費用はあまり気にならない
- 遺言について調べてみたけど正直良くわからなかった
- 面倒な事はせずに遺言を作成したい!
- 今のところ、書いた遺言を書き直す予定が無い!
公正証書遺言はプロに書いてもらう遺言なので、高齢の方や法律の知識が乏しい方におすすめです!
自筆証書遺言がおすすめなのはこんな人
自筆証書遺言がおすすめなのはこんな人です
- 自分で調べることが好き
- 用紙も自由に選びたい
- 遺言にお金をかけたくない
- 遺言の内容を変更する可能性が高い
個人的には、どちらかで悩むレベルであれば自筆証書遺言で始める事をおすすめしています
特に40代~50代の方には、自筆証書遺言がおすすめです。
何故なら、まだ若い方はこの先遺言の内容が変わっていく可能性があるからです
難儀な思いをするかもしれませんが、まずはいろいろ調べながら自分で自筆証書遺言を作成してみれば、後悔しないよう準備できることも増えてくるかもしれません
まとめ
今回は、自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリットを紹介しました。
当事務所は、自筆証書遺言作成のサポートも行っております。
- この書き方で合っているかな
- 法律上問題となる部分はないかな
- 家族がもめないように配分するにはどうしたらいいかな
もし遺言のことでお悩みなら、まずは相談ください。