民事信託とは
財産の所有者が信託契約によって、家族や信頼できる人に財産を託し、受益者のためにその財産を管理・運用・処分することを民事信託といいます。
「信託」は、信託銀行や信託会社などに手数料を払って財産を管理してもらう「商事信託」が有名ですが、商事信託以外の信託は、「民事信託」「家族信託」などと呼ばれています。
「家族信託」と聞くと「家族」にしか信託ができないと思っている方も多いのですが、決してそうではありません。
「信頼できる人」「愛する人」であれば、血縁関係がなくても、戸籍上の夫婦でなくても大丈夫。そこで、「家族信託」という名称を使わず「親愛信託」という名称を使うこともあります。
民事信託の基本と仕組み
信託には、「委託者」「受託者」「受益者」と呼ばれる役割があります。
委託者 | 「委託者」とは、もともと財産を持っている立場の人。自分の決めた特定の財産について信託をする立場の人。 |
受益者 | 「受益者」とは、信託財産について受益権という権利を持っている者。 |
受託者 | 「受託者」とは、信託財産の名義人となり信託の目的を達成するために必要なことをする義務を負う人。 |
民事信託と軍用地
沖縄では「軍用地」と呼ばれる土地の所有権を持っている方が多くいます。
上記表によると
委託者 | もともとの軍用地の所有者 |
受益者 | 軍用地料や軍用地の売却代金をもらう人 |
受託者 | 信託契約後の軍用地の所有者や軍用地を売却処分した際の金銭を管理する人 |
軍用地は先祖代々の土地が接収されている場合も多く、他人に売却せず子や孫の代まで引き継いでほしいと考えている方も多くいます。
遺言では、次の継承者しか指定できませんが、民事信託であれば、次のまたさらに次の継承者も指定することができ、「先祖代々の土地を子や孫で受け継いでほしい」という希望が叶います。
また、もし軍用地地主の方が認知症を発症すると、軍用地料が振り込まれる銀行口座が凍結され、生活費が引き出せなくなる可能性もあります。
そこで、認知症になる前に受託者と信託契約を締結することで、信託財産の管理は受託者に任せながら軍用地料は自由に使える上、委託者が認知症になっても生活費が銀行から引き出せないなどの心配もなくなります。
認知症になってからでは、信託契約を結ぶことができなくなりますので、健康なうちに対策しておくことが必要です。
民事信託のメリット
民事信託が活用できる様々な問題
こんな方におすすめ
- 軍用地を血族で引き継ぎたい
- 同性婚のパートナーに財産を遺したい
- おひとり様なので老後が心配
- 障がいのある子の「親亡きあと」問題
- 自分が亡くなったあと、残された妻が心配
- 姉妹が海外に嫁いだため、親が亡くなったら遺産相続の手続きが大変そう