遺言

【大切な遺産を守るためのガイド】遺言と遺留分侵害について知ろう

こんにちは。浦添市の行政書士、大湾です。

遺言作成をお考えのみなさん。

「遺留分侵害」という言葉を聞いたことがありますか?

大切な遺産を家族や愛する人にしっかりと残したいと思うのは当然のことですが、

その手続きやルールは少し複雑かもしれません。

今回は、遺言と遺留分侵害について、わかりやすく解説します。

遺言について

 まず、遺言についてです。

遺言とは、自分の死後に遺産をどのように分配するかを書き残すことです。

これは、法律で定められた方式に従って書く必要があります。

その方式は厳格に定められていて、要件を満たしていないとせっかく書いた遺言が無効になる可能性もあるんですよ。

 

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また、遺言を作成する際には、誰にどのような財産を残すか具体的に書き記す必要がありますが

遺産の配分については注意が必要です。

 

遺留分侵害について

遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、

遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。

遺言では、被相続人が自分の死後に、自分の財産をだれにどのように分配するか自由に定めることができます。

しかし、遺産のすべてを「〇〇財団に寄付する」としたらどうなるでしょう。残された家族は今後の生活費に困るかもしれません。

 

また沖縄ではありがちですが、トートーメーを継ぐ者が多く財産をもらう傾向があります。

でも「すべての財産をトートーメーを継ぐ長男に相続させる」という内容にしたら

他の兄弟姉妹は納得するでしょうか。

 

そこで、相続人の保障のために一定の制約があります。これが遺留分の制度です。

 

遺留分侵害額請求権

被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与又は遺贈し、遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合、遺留分権利者は、贈与又は遺贈を受けた者に対し、遺留分を侵害されたとして、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。 これを遺留分侵害額の請求といいます。

 

物件の返還を請求する「遺留分減殺請求」という手続きもありますが、

2019年7月1日以後に開始した相続では、遺留分を侵害された相続人(遺留分権利者)は、

遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することになりました。

 

遺留分権利者から請求を受けた受遺者又は受贈者が、

金銭を直ちには準備できない場合には、

 

受遺者等は、裁判所に対し、金銭債務の全部又は一部の支払につき相当の期限の許与を求めることができます。

 

 

遺留分の相続財産に対する割合

遺留分を有する者は、配偶者、子(代襲相続人も含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)ですが、兄弟姉妹には遺留分がありません。

 

遺留分の割合

(1)配偶者のみが相続人の場合 2分の1
(2)子のみが相続人の場合 2分の1
(3)直系尊属のみが相続人の場合 3分の1
(4)兄弟姉妹のみが相続人の場合 遺留分なし
(5)配偶者と子が相続人の場合 配偶者が4分の1、子が4分の1
(6)配偶者と父母が相続人の場合 配偶者が3分の1、父母が6分の1
(7)配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合 配偶者が2分の1、兄弟姉妹は遺留分なし

 

つまり、妻(または夫)のみが相続人だった場合、

例え夫が「すべての財産を甥に相続させる」という内容の遺言をしても

妻(または夫)には、遺産の半分をもらう権利(遺留分)があります。

 

一人っ子の息子または娘が亡くなって、お父さん、お母さんのみが相続人だった場合、

亡くなった息子(または娘)が

「すべての財産を、婚姻関係にないパートナーの〇〇に遺贈する」という遺言があっても

お父さん、お母さんには、遺産全体の3分の1(父母それぞれ6分の1)の遺留分があります。

 

一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。

例えば、子どももいない夫婦で、両親も亡くなっていた場合

相続人は、配偶者と兄弟姉妹となりますが、

もし、妻(または夫)に全財産をあげたいというのであれば、

そのような内容で遺言を作成すれば、兄弟姉妹に財産を持っていかれることはありません。

 

補助者ぶう太郎
補助者ぶう太郎
はあ・・・遺留分って、計算が面倒だね

 

このように、相続人であっても遺留分があったり、なかったり、

遺留分があっても遺産をもらえる割合が相続人ごとに異なっていたりと

遺留分の計算は面倒で複雑なので、専門家に相談することをおすすめします。

 

専門家に相談してみる?

 

 

遺留分の算定の基礎となる遺産の計算方法

遺留分がいくらになるのかを計算するには、

まず、遺産全体の額を算定しなければいけません。

 

遺留分の算定の基礎となる遺産の計算方法は、

残されたプラスの相続財産に遺贈されたものと1年以内にされた贈与の財産の価額を加えたものが原則となります。

 

さらに以下の財産も対象になります。

  • 相続人に対する特別受益にあたる生前贈与(相続開始前10年以内)
  • 遺留分を侵害すると知って行われた贈与
  • 遺留分権利者に損害を与えることを知って行われた不相当な対価による有償行為

 

これらの合計から負債(借金)を差し引いた金額が遺留分の基礎となる財産となります。

 

法的手続きと対処方法

遺留分のことを考えず遺言を作成することは可能ですし、

遺留分は必ず主張しなければいけないものでもなく

相続人らが「遺言の通りで良い」というなら、問題ありません。

 

しかし・・・

んなわけないですよね。

遺産の分け方に不平等や偏りがあれば、文句を言う相続人は必ずいます。

 

ですから、遺留分を無視した遺産の分け方は、結局争いの種を作ってしまい

「揉めないために遺言を遺したのに・・・」という目的から外れてしまう可能性があります。

 

そこで、「遺留分の基礎となる財産」がいくらかを確認し、

個別の遺留分の割合を確認した上で、遺言を作成するほうがいいでしょう。

 

遺留分の基礎となる財産の算定や、遺留分の割合や遺留分権利者については、法的な知識が必要です。

遺言の作成は専門家にご相談ください。

 

遺言のことでちょっと相談してみる

 

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