こんにちは 行政書士の大湾です。
自筆証書遺言のご相談の中には、ご自分で作成された内容を添削してほしいという方もいらっしゃいます。
本日もそのようなご相談がありました。
しかし・・・
「うう、これは!!」
遺言ではなく、家族へ感謝のお手紙!!
「〇〇さんの気持ちを伝えるこの遺言はとても素晴らしい内容ですけれど、財産の分配について遺族の皆さんが困らないようにするためには、手直しが必要です・・・」
子どもたちに迷惑をかけたくないと、遺言を作成される方は多いですが
いざ自分で遺言を書いてみると、意外と難しい!!
そう思っている人は多いはずです。
「財産の分け方について、この書き方であってる?」
「いざというとき無効になったらどうしよう」
「遺族が財産の内容を理解してくれるかな」
こんな心配をしている人も多いかもしれません。
今回はそんな疑問にお答えするべく、遺言の例を見ながら自筆証書遺言の書き方についてお伝えしたいと思います。
まずは、自筆証書遺言の概要を30秒でサクッと解説
自筆証書遺言とは、文字通り、自分で書いて作成する遺言のことです。
遺言といえば、公証役場で作成する「遺言公正証書」もありますが、公証人が作成するため「費用がかかる」「様々な書類を集めなければならない」などの理由で、もっと簡単に遺言を書きたいと思う方は多くいます。
そこで、自筆証書遺言なら
- 費用がかからない
- 自分の好きなときに好きなタイミングで書ける
- 用紙やデザインに制約がない
- 何度書き直してもお金がかからない
- 内容を秘密にできるので、自分の書きたいことを書ける(感謝も愚痴も)
など、様々なメリットがあります。
決まったルールさえ守っていれば、遺言の紙はノートの切れっぱしでもいいですし、青や緑のペンで書いても大丈夫。
テレビドラマに出てくるような、時代劇の巻物のような用紙にしたっていいんですよ。
自筆証書遺言がむずかしいのはなぜ?無効になる可能性はあるのか解説
せっかく書いた遺言が無効になるケースってどんなとき?
「遺言は自分で作成できると言っても、せっかく書いた遺言が無効になることもあるの?」
はい、あります!!
自分の財産の行方をせっかく割り振ったのに、しょうもないミスのせいで、遺言が無効になることもあります。
自筆証書遺言を書くにも、民法で定められたルールがあり、好き勝手に書くことはできないのです。
でも、確かな知識で正確な記載をすれば大丈夫!!
「確かな知識」と「正確な記載」について、解説していきます。
自筆証書遺言は「確かな知識」が必要
自筆証書遺言には守られなければならないルールがあります。
民法968条
- 自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない。
- 前項の規定にかかわらず,自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第978条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には,その目録については、自書することを要しない。この場合において,遺言者は,その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
- 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じない。
民法968条をかみ砕いて説明すると・・・
- 財産目録以外は全部自書すること
- 「〇年〇月〇日」と作成日を必ず入れること
- 遺言者の署名の横に押印すること
- 財産目録は自書でなくてもいいけど、目録毎に署名・押印すること
- 財産目録が両面印刷のときは、両面に署名・押印すること
- 訂正があるときは修正ルールに従うこと
- 訂正したことを余白に指示すること(〇行目に●字削除、●字追加など)
- 訂正箇所にも押印すること
ご相談者の中には
「自筆証書遺言ってもっと自由度が高くて、もっと簡単に書けると思っていたのに意外と難しい」
という方もいます。
しかし、これは民法で定められたルールなので、私にはどうすることもできませんが
もしこのような知識がなく、自筆証書遺言に修正液を使ってしまったり、押印の代わりに「名字に〇」などのサインが書かれていた場合、自筆証書遺言の無効の可能性が高くなってしまうので、やはり確かな知識を持って、遺言を作成しなければなりません。
それ以外にも、連名で署名してある、財産の内容があいまいなども、無効の原因となります。
また、遺言作成当時はあった財産が、遺言の効力発生時には売却されてしまっていたとか、財産を相続させる予定だった人が先に亡くなってしまうなど、形式的なミス以外にも遺言が無効となる原因は様々あります。
遺言の書き方の本もたくさん売っている
ここまで読むと遺言を書くってやっぱり大変。ひとりで遺言を書くのは無理なんじゃないかとお思いかもしれません。
でも大丈夫。本屋さんに行けば、遺言の書き方に関する書籍がたくさん売られていますし、ネット上にも、自筆証書遺言の書き方についての情報があふれています。
それでもやっぱり不安なときは?
貴方の思いを行政書士に伝えてください。
私がそれを文書にします。
法律的な書き方や無効にならないような内容は行政書士任せて。あとはあなたがそれを丸写しするだけです。
自筆証書遺言に財産を「正確に記載」するには
財産には預金や不動産、証書や株など様々なものがあります。
自筆証書遺言では、例えば預金の場合「銀行口座」「支店名」「口座番号」など正確に記載しなければなりません。
もし、口座番号の「0」と「6」を間違って記載してしまったら?
その部分の内容については、遺言が無効になってしまいます。
そこで!
わざわざ自分で口座番号を自書しなくても、通帳のコピーをつければいいというルールになりました(民法968条第2項)。
預金通帳や不動産登記簿のコピーをつければ、いちいち口座番号や支店名、不動産の地番や家屋番号、面積などもいちいち書く必要もありませんし、記載のミスもありません。
以前は、財産目録が通帳や不動産登記簿のコピーでいいという条文はなかったんですよ。
今から遺言を書く私たちは、ほんとラッキーです。
ただし、財産目録にも署名・押印する必要があります。
「まだルールがあるのー??」
やっぱりひとりで遺言を書くのは面倒ですね・・・
さくら行政書士事務所では、自筆証書遺言の原案の作成だけでなく、このように財産目録も一緒に作成し、署名押印までお手伝いいたしますので、あとは封筒に入れてタンスにしまっておくか、だれか信用ができる人に預けておくだけでいいんですよ。
ちなみに、私が自分で自分の自筆証書遺言(仮)を作成してみました
子どもがいない夫婦の例です。
一行目の「昭和」の加筆の箇所に押印がありますね。そして、その行の左端に「2字加入」と署名があります。
二行目の「貯金」を「預金」に訂正の箇所にも押印があります。そして、その左端に「2字削除、2字加入」と署名があります。
ってか、「明」ってだれー!
夫や甥の名前は架空です。
付言は本心です
・・・「再婚しろ」とか「お墓は作るな」とか冷たいですか?
私の夫はないちゃーで、沖縄にお友達もあんまりいないので私が先に死ぬと、寂しくて後追いしないか心配です(笑)
あと、子どももおらず、お墓を継ぐ人もいないので私は、浦添霊園の共同墓地で十分です。
もしかすると、共同墓地どころか菩提樹葬にするかもしれません。
別紙1は、不動産に関する情報です。「別紙1」の文字はここでは手書きですが、ワープロで打っても大丈夫です。
不動産登記簿はA4サイズなので、このままコピーをすると余白がなく署名できなかったので、95%で縮小し下の方に余白を作り署名押印しました。
こんな感じで遺言が作成できればいいのですが、ご自分で作成するのがむずかしい場合は、ご相談ください。
当事務所では女性行政書士が対応します。特に女性のお客様から
・女性なので相談しやすかった
・私も子供がいないので同じ境遇の人に相談できてよかった
などのご感想を頂いております。
自筆証書遺言の書き方でお悩みの方は、さくら行政書士事務所にご相談ください。